両軍の先発ピッチャーが発表されたとき、観客が驚いたのは、
キャッチャーが阿部
ではなく、村田善だった事だった。
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工藤さん…
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……。
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…そのメッセージ、しかと受け取りました!!
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工藤は、
「(ダイエー球団が)ぼくの1番きらいな駆け引きをした事が、許せなかった」
という球史に残る名言を吐き、
中日と読売を天秤にかけさんざん駆け引きした挙げ句、読売にFA移籍した。
その際、当時読売の正捕手だった村田真は、
「工藤は150勝以上した投手なんだから、打たれたらアイツが悪い。
実績、給料すべてむこうが上なんだから、打たれて捕手が悪いといわれては割に合わない」
と、発言した。
村田真は工藤と同い年なので、本人としてはちょっとした気軽なジョークのつもりだったかも知れないし、
あるいは工藤がアンチ読売というのは入団前から本人が公言していた事なので、
絶対ジャイアンツ主義である村田のちょっとした意地悪だったかも知れない。
「工藤とケンカしたところで、長嶋監督はオレを外さないはず」という驕りもあっただろう。
何にせよこの発言は、工藤の怒りを買った。
「だったらお前とは組まないよ」
工藤は村田真とのバッテリーを拒否、
「工藤専用キャッチャー」として村田善を指名し、
長嶋監督(当時)もこの工藤のわがままを認めてしまったのだ。
そういうゴタゴタがあり、読売では、
工藤が先発の日は控え捕手の村田善がマスクを被るようになった。
たまに試合の流れで村田真とバッテリーを組むことがあっても、
工藤は村田真のサインには徹底してクビを振り、
ときには全国中継の時間帯に、マウンド上で激しく口論することもあった。
そしてその後、村田真が引退すると、
工藤はキャッチャーにこだわらなくなり、
現在では普通に正捕手の阿部とバッテリーを組んでいる。
その工藤が、この日、再び村田善とバッテリーを組んだのである。
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工藤さん…。僕の尊敬する工藤さん…。
分かりました。工藤さんは僕に、たとえ相手が正捕手だとしても、
「イヤなときはイヤ」と自分の主張を貫き通せ!と言ってるんですね!
工藤さんは、たとえ村田真さんが村田善君より実力が上でも、
決して妥協しなかった。
バッティングやキャッチングの技術なんかじゃない、
自分が気持ちよく投げるために、
決して村田真さんとは組まなかった。
バッテリーはお互いの技術じゃない、相性なんだ、
そのことを、僕に言いたいのですね!工藤さん!!
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野口はルーキーの頃から同じ左腕の大エース・工藤を「目標」と言い、リスペクトしている。
(野口の背番号47は、野口が自ら希望して付けた番号である)
今日の「先発キャッチャー・村田善」は、野口に大きな勇気を与えたのだった。
「バッテリーは技術じゃない、お互いの相性なんだ!」